急速に進化するビジネス環境において、アイデアを迅速に形にし、プロトタイプやアプリケーションを開発するスピードが競争力の鍵となっています。しかし、全ての企業や個人が高度なプログラミング知識を持っているわけではありません。
そこで注目されているのが、「ノーコード(NoCode)」という手法です。ノーコードツールを活用すれば、複雑なコーディングの知識がなくても、直感的な操作で高機能なWebサイトやアプリを開発することが可能です。スタートアップから大企業まで、世界中で利用が広がるノーコードツールの最新動向をふまえ、おすすめツールを15選ご紹介します。ビジネスのデジタル変革を加速させるための一助となれば幸いです。
ノーコードとは?
ノーコードとは、プログラミングの知識がなくても、視覚的な操作でアプリやシステムを開発できる技術のことです。これは、既に構築されたコードを背景に、ユーザーがクリックやドラッグ&ドロップといった直感的な操作でアプリケーションを組み立てられるツールやプラットフォームを指します。
ノーコードの主な特徴
- 直感的な操作性
ノーコードツールは、初心者でも扱いやすいグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を備えており、マウス操作のみでアプリケーションの構築が可能です。
- コーディング不要
プログラムコードの記述を必要としないため、開発の敷居が大幅に低下し、非エンジニアでも簡単にプロジェクトに参画できるようになります。
- ビジネス全体での活用
開発の手軽さから、Webサイトやアプリケーションの作成、データ管理システムの構築、業務プロセスの自動化など、さまざまなビジネスニーズに対応可能です。
ノーコードとローコードの違いとは?
ノーコードとローコードは、いずれもプログラミングを簡素化し、アプリやシステムの迅速な開発を支援するツールですが、その対象や使用用途には明確な違いがあります。
項目 | ノーコード | ローコード |
プログラミング知識の必要性 | 不要。非エンジニア向けに設計され、GUIを利用して直感的に操作可能 | 基本的なプログラミング知識が必要。エンジニア向けの設計 |
操作性・使いやすさ | ユーザーフレンドリーで簡単に操作可能。迅速な開発が可能 | 柔軟で強力な環境を備え、操作に一定のスキルが必要 |
主な用途 | 簡単な業務プロセスの自動化やデータ管理システム構築など、汎用的な業務に最適 | 複雑なカスタマイズが必要なプロジェクトや高度な技術的要件のあるシステム開発に最適 |
カスタマイズ性 | 制限がある。一般的なテンプレートや既存の設定に基づく構築 | 高いカスタマイズ性を持ち、特定の要件に合わせた柔軟な設計が可能 |
ノーコードツールを導入するメリット
ノーコードツールを導入することで、ビジネスにおいて開発のスピードやコスト効率を大幅に向上させることができます。また、非エンジニアでも簡単に使えるため、組織全体での活用が促進されます。
開発スピードの向上
ノーコードツールはプログラミングを必要とせず、視覚的な操作で開発が可能です。このため、アイデアを迅速に形にでき、プロトタイプから最終的なプロダクトまでの開発サイクルが短縮されます。
コスト削減
エンジニアリングのリソースを使わずにアプリケーションを構築できるため、開発コストを大幅に削減できます。特にスタートアップや中小企業にとっては、開発にかかる初期投資を抑える点で有利です。
ユーザーフレンドリーで誰でも使える
ノーコードツールの操作は直感的であり、特別な技術知識がなくても扱えるため、業務部門や経営層など、幅広い従業員がプロジェクトに参加できます。これにより、チーム全体での連携が強化され、スムーズなプロジェクト推進が可能です。
柔軟性と拡張性の高さ
多くのノーコードツールはカスタマイズ性を備えており、ビジネスの成長や変化に応じて機能や構造を柔軟に調整できます。また、ツールによっては、他のシステムやアプリケーションとの統合も可能です。
イノベーションの促進
ノーコードの手軽さにより、従業員が自らアイデアを試し、具現化する環境が整います。これにより、創造的な発想や新しい解決策の導入が促進され、組織全体のイノベーションが進むでしょう。
ノーコードツールを導入する際の注意点
ノーコードツールは便利な反面、導入にあたりいくつかの注意点を把握しておく必要があります。これらを考慮することで、ノーコードツールの効果的な活用が可能になります。
セキュリティとプライバシー
多くのノーコードツールはクラウドベースで運用されるため、外部サービスへの依存度が高くなります。これにより、データのセキュリティやプライバシーの確保が重要課題となります。業務内容に応じて、ツールのセキュリティ基準やプライバシーポリシーを確認し、リスクを管理する対策を講じることが必要です。
カスタマイズの制限
ノーコードツールは基本的な機能を迅速に実装できる反面、特定のビジネス要件に応じた細かいカスタマイズが難しい場合があります。業務プロセスや要件が複雑な場合、ノーコードツールが対応できない可能性もあるため、事前にツールの機能範囲を確認しましょう。
長期的な依存性
特定のノーコードツールに依存することで、システムの変更が困難になる可能性があります。例えば、ツールの更新やサポートの終了によって、新たなツールへの移行が必要となった際にコストや時間がかかることが考えられます。
スケーラビリティの問題
一部のノーコードツールは、大規模プロジェクトや大量のデータ処理に対応しきれない場合があります。ツール選定の際には、事業の成長や将来的な拡張に備え、スケーラビリティを確認することが重要です。
サポート体制とコミュニティの有無
ツールによっては、十分なサポート体制がない場合や、活発なユーザーコミュニティがないことがあります。こうした場合、トラブルが発生した際に迅速な対応が難しくなる可能性があるため、サポート内容やリソースの充実度も確認しておくと良いでしょう。
ノーコードツールを選ぶ際のポイント
ノーコードツールは多種多様で、それぞれに特徴や機能が異なります。ツールを選ぶ際は、ビジネスニーズや目的に合わせて以下の点に注目することが大切です。
利用目的に合っているか
ノーコードツールには、Webサイト構築、アプリケーション開発、業務プロセスの自動化など、さまざまな種類があります。ツールを選ぶ際は、まず自社の目的や用途に合った機能を持つものを選定することが重要です。特に、使用頻度の高い機能が揃っているか確認しましょう。
操作性に問題がないか
ツールを利用する担当者が技術に不慣れである場合、操作のしやすさが大きなポイントになります。視覚的に分かりやすく、直感的に操作できるインターフェースを持つツールであれば、学習コストを抑え、効率的な業務遂行が可能になります。
セキュリティ対策は十分か
外部サービスに依存するノーコードツールは、セキュリティ対策が重要です。特に、個人情報や機密データを取り扱う場合、データ保護のためにツールがどのようなセキュリティ機能を備えているか、またデータの保存場所や暗号化の有無を確認しましょう。
他システムと連携できるか
ノーコードツールを利用する際には、既存のシステムや他のツールとの連携が必要になることも多くあります。APIの提供状況や、他サービスとのデータ連携機能があるかを確認しておくと、業務の効率化が進みやすくなります。
コストとサポート体制が見合っているか
導入にかかる初期費用や月額料金、そしてサポート体制についても事前に確認しておくことが大切です。特に、サポートが充実しているか、導入後のメンテナンスやトラブル対応が迅速に行えるかを見極めることが、長期的な安定運用に繋がります。
目的別おすすめノーコードツール15選
ビジネスでの利用目的に合わせて最適なノーコードツールを選ぶために、目的別におすすめのツールを厳選しました。以下の各カテゴリで、具体的なツールの特徴と使い方をご紹介します。
プロダクト開発向けノーコードツール3選
プロダクト開発向けのノーコードツールを利用することで、素早くアイデアを形にし、機能的なプロトタイプやアプリを構築できます。ここでは、プロダクト開発に適したノーコードツールを3つご紹介します。
Bubble
Bubbleは、ドラッグ&ドロップ操作でWebアプリケーションを構築できるノーコードツールです。初心者でも使いやすい設計になっており、デザインから機能の開発まで一貫して行うことができます。API連携機能も充実しているため、他のシステムやサービスとの統合も簡単に実現できます。特にプロトタイプの迅速な作成や、アイデアの検証に適しているツールです。
特徴
- 直感的な操作でデータベースやワークフローが構築できる
- 高度なカスタマイズ性を持ち、複雑なアプリにも対応可能
- API連携が可能で、他のサービスやデータベースとも柔軟に接続可能
Adalo
Adaloは、モバイルアプリの開発を専門とするノーコードツールです。テンプレートを活用したデザインが簡単に行えるほか、ドラッグ&ドロップでアプリを直感的に作成できます。アプリ公開までのサポートも提供されており、短期間でアプリをリリースしたい場合に便利です。特に中小規模のアプリケーション開発に適しています。
特徴
- プリセットされたコンポーネントで簡単にアプリをデザイン
- テンプレートやドラッグ&ドロップでの操作が可能
- データベースやAPIとの連携機能が充実
Glide
Glideは、Googleスプレッドシートをデータベースとして活用し、Webアプリを構築できるツールです。スプレッドシートを編集するだけでアプリがリアルタイムに更新されるため、管理が非常に簡単です。テンプレートやカスタマイズオプションも豊富に用意されており、ビジネスや教育、チーム管理など幅広い分野で活用されています
特徴
- スプレッドシートのデータをリアルタイムに反映することが可能
- テンプレートの利用やUIのカスタマイズが容易
- ビジネスやプロジェクトの管理に適した多用途なアプリ開発が可能
業務アプリケーション特化型ノーコードツール6選
業務効率化やプロセスの自動化を目的としたノーコードツールは、日々の業務をスムーズに進める上で非常に役立ちます。以下に、特に業務アプリケーション開発に適したノーコードツールを6つ紹介します。
kintone
kintoneは、業務効率化を目的としたアプリケーションを構築できるツールです。紙やエクセルに分散している情報を一元管理でき、非エンジニアでも簡単に業務アプリを作成することが可能です。外部サービスとの連携が豊富で、複数システムを効率的に活用したい場合にも適しています。
特徴
- 業務プロセスに合わせた柔軟なアプリ作成が可能
- 外部サービスとの連携が豊富で、既存システムに統合しやすい
- 担当者が非IT部門でも容易にアプリを作成・管理可能
Airtable
Airtableは、スプレッドシート感覚で操作できるデータベース型のツールです。視覚的で直感的な操作が可能で、プロジェクト管理やタスク追跡、データの分類など、さまざまな用途に対応しています。API連携やテンプレートも豊富に備わっており、柔軟にカスタマイズが可能です。
特徴
- 視覚的にデータベースを管理できる
- データの分類やフィルタリング、カスタマイズが柔軟
- 多様なテンプレートやAPI連携により拡張性が高い
Platio
Platioは、モバイルアプリ作成に特化したツールです。100種類以上のテンプレートが用意されており、短時間で業務アプリを作成できます。社内システムとのデータ連携もスムーズに行え、業務プロセスの効率化に役立ちます。
特徴
- モバイルアプリを即日運用でき、業務の迅速化を実現
- 社内システムとのデータ連携が容易で業務の自動化を促進
- 作成したアプリを販売するための機能も提供
Zapier
Zapierは、複数のWebサービスやツールを連携させ、業務の自動化をサポートするツールです。コードを書かずにワークフローを設定できるため、業務の効率化やミスの削減が期待できます。利用可能なサービスが非常に多く、柔軟な連携が可能です。
特徴
- 1500以上のアプリとの連携が可能で、自動化の範囲が広い
- コーディングなしでの設定が可能で、ビジネス利用に最適
- 既存ツールとの統合によるワークフローの自動化
AppSheet
AppSheetは、Google Cloudが提供するアプリ開発ツールです。GoogleスプレッドシートやExcelなどのデータを基に、直感的にアプリを構築できます。特に、現場業務を効率化するためのモバイルアプリ作成に適しています。
特徴
- データソースとしてGoogleスプレッドシートやExcelを利用可能
- アプリのリアルタイム更新が可能で、作業効率が向上
- AIや機械学習の機能も備えており、柔軟な業務対応が可能
@pocketは、日本の現場業務に特化したノーコードツールです。直感的な操作で簡単にアプリを作成でき、現場スタッフでも利用しやすい設計が特徴です。国内のビジネス環境に適応したサポート体制も整っています。
特徴
- 業務の実態に合わせたシンプルでカスタマイズ可能なUI
- 使いやすさと機能性を両立しており、現場での操作も直感的
- 日本語サポートが充実し、国内のビジネスに最適
Webサイト制作特化型ノーコードツール4選
Webサイト制作向けのノーコードツールを活用することで、デザインの知識やコーディングスキルがなくても、プロフェッショナルなWebサイトを構築できます。以下に、Webサイト制作に特化したノーコードツールを4つご紹介します。
ペライチ
ペライチは、ランディングページやシンプルなWebサイトを直感的に作成できる日本発のノーコードツールです。ドラッグ&ドロップで操作ができるため、初心者でも簡単に扱えます。豊富なテンプレートが用意されており、短期間でのサイト公開が可能です。
特徴
- ドラッグ&ドロップで簡単にランディングページが作成可能
- 豊富なデザインテンプレートとSEO対策機能を搭載
- 初心者にも使いやすく、国内向けのサポートが充実
Webflow
Webflowは、高機能なWebサイトをコーディングなしで作成できるツールです。レスポンシブデザインに対応しており、PCやスマートフォンなど、さまざまなデバイスで最適な表示を実現できます。デザインの自由度が高く、プロフェッショナルな仕上がりが期待できます。
特徴
- コーディングなしでプロフェッショナルなデザインを実現
- 完全なレスポンシブデザインに対応
- CMS機能を搭載し、ブログやコンテンツの管理が容易
Studio
Studioは、デザインとコーディングを統合したWebサイト作成ツールです。細かなカスタマイズが可能で、視覚的に美しいWebサイトを簡単に構築できます。日本語サポートが充実しており、国内ユーザーにも使いやすい環境が整っています。
特徴
- デザインの自由度が高く、細かなカスタマイズが可能
- レスポンシブ対応で、デバイスごとに最適化された表示
- 簡単に利用できる日本語サポートと豊富なチュートリアル
Wix
Wixは、豊富なテンプレートとドラッグ&ドロップエディターを備えたWebサイトビルダーです。追加機能も多彩で、ECサイトや予約システムなど、幅広い用途に対応可能です。初心者から上級者まで、さまざまなニーズに応えられるツールです。
特徴
- 500以上のテンプレートと多彩なデザインオプション
- 内蔵のSEOツールとマーケティング機能が充実
- eコマースや予約システムなど、追加機能が豊富
ECサイト構築特化型ノーコードツール2選
ECサイトを構築するためのノーコードツールを利用すれば、商品販売に特化したオンラインショップを迅速に立ち上げることができます。ここでは、ECサイト構築に最適なノーコードツールを2つご紹介します。
Shopify
Shopifyは、グローバルで広く利用されているECサイト構築プラットフォームです。テンプレートやプラグインを活用して、自由にデザインや機能をカスタマイズできます。安全な決済システムやマーケティングツールも充実しており、効率的なECサイト運営をサポートします。
特徴
- 多彩なテンプレートとアプリが利用可能で、デザインや機能を自由にカスタマイズ可能
- 安全な決済機能や物流管理システムが充実
- マーケティング支援ツールや分析機能を搭載し、売上拡大をサポート
BASE
BASEは、国内向けのECサイト構築ツールで、誰でも簡単にオンラインショップを作成できます。無料で始められる手軽さが魅力で、LINEやSNSとの連携機能も備えています。日本のビジネスシーンに特化した機能が多く、小規模店舗に適したツールです。
特徴
- 無料で利用でき、必要な機能をカスタマイズして追加可能
- LINEやSNSとの連携機能があり、集客や顧客とのコミュニケーションが容易
- 日本語サポートが充実し、国内のビジネスに特化した機能を提供
まとめ
ノーコードツールの進化により、プログラミングの知識がなくてもさまざまなアプリケーションやWebサイト、業務自動化ツールを簡単に開発できるようになりました。これらのツールは、ビジネスにおける迅速なプロトタイプ開発や、コスト削減、業務効率化を実現する強力なサポーターです。
一方、せっかくツールを導入しても上手く使いこなせなければ、無駄なコストだけが掛かってしまいます。そのため、あらかじめツールの特徴を確認し、自社のニーズに最も合ったものを選ぶことが重要です。
ノーコードツールを活用することで、ビジネスのアイデアをスピーディに具現化し、競争力を高めることが期待できます。DXが加速する今、ノーコードを取り入れて、業務効率化を目指しましょう。