入札情報は、公共事業や官公庁の調達案件に関わる企業にとって非常に重要な情報源です。入札情報を正確かつ効率的に収集することは、ビジネスの成功に直結します。従来の手動による調査方法に加え、近年では自動化ツールを活用した効率的な情報収集が注目されています。本コラムでは、入札情報の基本から、その収集方法、さらには情報収集の自動化手段について詳しく解説していきます。特に、入札情報を逃さずに集めるための具体的な方法や自動化ツールの活用について紹介します。
入札とは
入札は、公共機関の工事や企業が発注する業務に対して、複数の業者が条件や価格を競い合い、最も適切な提案を行った業者が選ばれる仕組みです。
入札の目的は、公正で透明性のある取引を実現し、適正な価格で品質の高いサービスや製品を調達することにあります。入札は、日本国内の公共事業だけでなく、国際的なプロジェクトや民間企業間でも広く行われています。
入札の種類
入札にはいくつかの種類があり、競争の形態や契約の方法によって異なります。ここでは、代表的な入札の種類を4つご紹介します。
一般競争入札
一般競争入札は、最もオープンな入札方式です。発注者が広く募集を行い、条件を満たすすべての企業が参加できるため、公平性と透明性が高いのが特徴です。参加企業は価格や条件で競い合い、最も有利な提案を行った企業が契約を獲得します。
指名競争入札
指名競争入札は、発注者があらかじめ選んだ特定の企業に対してのみ入札を招請する方式です。参加企業が限定されるため、一般競争入札に比べて競争が少ない一方、信頼できる業者との取引ができる利点があります。
随意契約
随意契約は、競争入札を行わずに、発注者が直接特定の業者と契約を締結する方式です。特定の技術や条件を持つ業者が必要な場合や、緊急の案件などで使用されることが多く、迅速な契約締結が可能です。
企画競争入札(プロポーザル)
企画競争入札は、価格だけでなく、提案内容の独創性や実行力なども評価基準に含める方式です。発注者は複数の業者からの提案を比較し、最も優れた提案を行った企業と契約を結びます。特にクリエイティブな分野や高度な技術が求められるプロジェクトで利用されます。
主な公開サイト
入札情報を効率的に収集するためには、信頼性の高い公開サイトを活用することが重要です。ここでは、主な入札情報が公開されているウェブサイトをご紹介します。
デジタル庁 調達ポータル
調達ポータルは、公共調達に関する最新情報を提供するポータルサイトで、デジタル庁が運営しています。国の機関や地方公共団体が実施する入札や契約情報を検索でき、調達に必要な情報が一元管理されているのが特徴です。
国土交通省 電子入札システム
国土交通省 電子入札システムでは、国土交通省が発注する建設工事や関連業務の入札情報を提供しています。このシステムを利用することで、電子的に入札手続きを行うことが可能です。特に建設業界において重要な情報源となっています。
一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)
JACICは、公共工事に関する入札情報を提供している一般財団法人です。JACICでは、全国の公共工事の入札公告や結果情報を検索できるため、建設業界に特化した入札情報を得ることができます。
自治体のHP
多くの自治体は、自身のホームページで入札情報を公開しています。例えば、横浜市が提供している「ヨコハマ・入札のとびら」では、横浜市が実施する入札に関する情報を確認することができます。地域に特化した入札情報を得るためには、各自治体の公式サイトを定期的に確認することが重要です。
入札情報の収集方法
入札情報を効果的に収集するためには、いくつかの方法があります。従来の手動収集方法から、最新のテクノロジーを活用した自動化手法まで、状況に応じたアプローチを取ることが大切です。
ここでは、従来の手動による情報収集方法と、その課題について解説し、後ほど自動化による解決策を紹介します。
従来型の収集方法について
入札情報を収集する方法として、従来は主に次のような手段を通じて行われていました。
- Webサイトの定期確認
- メールマガジンの購読
- 業界紙の購読
Webサイトの定期確認
現在多くの企業や個人が、入札情報を定期的に発注機関のWebサイトで確認する方法を採用しています。国や地方自治体、公共機関が運営するサイトにアクセスし、入札公告や発注見通しを確認します。人間の手によって定期的に行う必要があるため、時間と手間がかかりますが、正確な情報を得るためには一般的な手法です。
メールマガジン購読
一部の公共機関や入札情報サービスは、メールマガジンを通じて最新の入札情報を配信しています。特定の条件に合致する案件が通知されるため、Webサイトを頻繁にチェックする手間が軽減されるメリットがあります。一方、情報の更新頻度や提供範囲が限られるといったデメリットもあります。
業界紙の購読
建設業界や公共事業に関連する業界紙には、入札情報が掲載されることがあります。紙媒体を通じて定期的に情報を得る方法は、特に紙ベースの資料が必要な業界で一般的でした。しかし、この手法も情報のスピードやリアルタイム性に欠けるという課題があります。
従来型の収集方法の課題とは
従来型の手動収集方法には、いくつかの課題があります。これらは効率的に入札情報を収集し、ビジネスチャンスを最大化する上での大きな障害となる場合があるため注意が必要です。
人的コストの増大
入札情報を手動で収集するには、多くの人手と時間が必要です。特に、多くの発注機関や自治体のWebサイトを頻繁に確認する必要がある場合、その労力は膨大になります。結果として、他の業務に割くリソースが減少し、生産性に影響を与える可能性もあるため注意が必要です。
情報の見落とし
手動で情報を収集する際、情報の見落としが発生する可能性があります。特に、発注機関のサイトが多岐にわたる場合や、更新頻度が高い場合、重要な入札情報を見逃してしまい、せっかくのビジネスチャンスを失いかねません。
リアルタイム性の欠如
手動収集では、リアルタイムに情報を得ることが難しい場合があります。特に、発注機関が突然重要な入札情報を公開した場合、手動で確認する手間や確認したタイミングの遅れにより、他社に先を行かれてしまいかねません。とくに早急な対応が求められる案件では不利にはたらくことがあります。
自動収集する方法
近年、テクノロジーの進化により、入札情報の収集は自動化が可能となりました。自動化を活用することで、人的コストや見落とし、リアルタイム性の課題を解決し、効率的な情報収集が実現します。ここでは、入札情報を自動的に取得する主な方法を紹介します。
RSSフィード活用
RSSフィードは、入札情報の自動収集において非常に効果的なツールです。多くの発注機関や自治体のWebサイトでは、最新の情報をRSSフィードとして配信しています。RSSリーダーを使用することで、更新された入札情報を自動的に取得でき、複数のWebサイトを手動でチェックする必要がなくなります。
RSSフィードの利点は、リアルタイムで情報を収集できる点と、情報が一箇所に集約される点です。例えば、特定のキーワードに関連する入札情報をフィルタリングして取得することで、重要な案件をすぐに確認できるようになります。
APIによる取得
API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を活用した方法は、入札情報の自動収集をより効率的に行う手段の一つです。多くの公共機関や入札情報提供サービスは、入札データにアクセスできるAPIを提供しています。このAPIを利用することで、システムやアプリケーションが自動的に入札情報を取得し、必要なデータをリアルタイムで集めることが可能です。
APIの利点は、データの精度が高く、必要な条件に合った情報のみをフィルタリングできる点です。さらに、取得したデータは社内の他のシステムとも連携させやすいため、業務の自動化やデータ分析にも活用できます。
ウェブスクレイピングツールの活用
ウェブスクレイピングは、指定されたWebサイトから自動的にデータを収集する手法です。入札情報を提供する複数のサイトから情報を効率的に収集するために、スクレイピングツールが利用されます。例えば、特定の入札ページや発注見通しページの更新を監視し、新たな情報が掲載された際に自動的にデータを取得することができます。
スクレイピングのメリットは、プログラムを設定すれば定期的に最新情報を集めることができ、人的な作業負担を大幅に削減できる点です。また、対象サイトがRSSやAPIを提供していない場合でも、情報を自動的に収集できるのが強みです。ただし、スクレイピングを行う際には、Webサイトの利用規約や法規制に十分な注意が必要です。
Octoparseを使った入札情報の自動収集方法を解説
入札情報を自動収集するための有効なツールの一つに、Octoparseがあります。Octoparseはノーコードで使用できるウェブスクレイピングツールで、専門的なプログラミング知識がなくても、簡単にWebサイトから入札情報を取得し、自動的にデータを整理できます。ここでは、Octoparseを使った入札情報の収集方法を解説します。
テンプレートの操作手順(入札情報業務の発注の見通し検索)
Octoparseを使用する際、最初のステップは既存のテンプレートを活用して入札情報を効率的に収集することです。Octoparseにはさまざまなウェブスクレイピング用のテンプレートが用意されており、入札情報の収集にも適したものがあります。具体的な操作手順は以下の通りです。
ステップ1.テンプレートの選択
Octoparseのダッシュボードにアクセスし、検索ボックスに「入札」や「発注」と入力します。すると、検索結果にいくつかのテンプレートが表示されますので、その中から「入札情報業務の発注の見通し検索」を選択しましょう。
ステップ2.パラメータの設定
テンプレートの詳細画面を開いたら、「パラメータ入力」のタブをクリックし、キーワードを入力します。たとえば「道路」と入力すると、道路工事に関する入札情報データをOctoparseが自動的に収集します。
ステップ3.実行とデータの保存
設定が完了したら、スクレイピングを実行します。カウンターが動いていれば成功です。すべてのデータ収集が完了するまで数分ほど待ちましょう。
収集したデータは、ExcelやCSVなどさまざまな形式で出力できます。ここでは、Excel形式でエクスポートします。
わずか3分ほどで、200件以上もの道路工事の入札データを一覧化できました。もちろん、作成したExcelにはフィルターを掛けたり、項目を編集したりすることも可能です。これにより、入札情報を簡単に整理・活用できます。
定期的な監視と更新のやり方
Octoparseでは、特定のWebサイトを定期的に監視し、入札情報の新規更新があった際に自動的にデータを取得する機能を活用できます。この機能を利用することで、最新の入札情報を逃すことなくキャッチし、効率的な情報収集が可能です。
スケジュール設定
Octoparseのスケジュール機能を使って、定期的なスクレイピングを設定できます。例えば、毎日や毎週など、任意の間隔で入札情報のページを自動的にチェックし、新しい情報が追加された際にデータを収集するようにプログラムできます。
アラート機能の活用
収集したデータに基づいて、条件に合致する入札情報が見つかった場合に、メールや通知で知らせるアラート機能も利用可能です。これにより、重要な入札案件を見逃さずに対応することができます。
データの自動更新
一度設定したスクレイピングプロセスは、継続的に実行され、最新のデータが自動的に更新されます。収集されたデータはクラウド上に保存され、いつでもアクセス可能です。さらに、データはExcelやデータベースに自動的に出力することができるため、社内システムへの連携もスムーズです。
これにより、常に最新の入札情報をリアルタイムで追跡し、適切なタイミングで入札に参加することが可能になります。
https://www.octoparse.jp/template/ippi-gyomu-mitoshi
https://www.octoparse.jp/template/ippi-koji-mitoshi
データ収集における法的遵守事項
ウェブスクレイピングを用いたデータ収集では、法的な側面に注意しなければならない点がいくつかあります。これを怠ると、場合によっては著作権侵害や不正アクセス禁止法などの法律に触れる可能性があります。ここでは、主な注意点を解説します。
1. 著作権法の遵守
ウェブサイトに掲載されている入札情報やテキストには著作権が発生する場合があります。特に、個別に作成されたコンテンツやデザイン要素などは、著作権法によって保護されています。したがって、データの使用や公開が著作権侵害とならないように注意が必要です。データの利用範囲が明示されている場合は、その範囲内で利用するようにしましょう。
2. サイトの利用規約の確認
ウェブサイトによっては、利用規約にスクレイピングの禁止が記載されている場合があります。このような規約を破ってデータを収集すると、サイト側とのトラブルや法的責任を問われる可能性があります。入札情報をスクレイピングする際は、必ず対象サイトの利用規約を確認し、規約に反しない形でデータ収集を行うことが重要です。
3. 不正アクセス禁止法への抵触
不正アクセス禁止法は、許可されていないアクセスやデータ取得を禁止しています。スクレイピングを行う際に、パスワードや認証を必要とするページに無断でアクセスしたり、セキュリティを回避する行為はこの法律に違反する恐れがあります。公開されていないデータや、アクセス制限がかけられているページにはアクセスしないようにしましょう。
4. 公開情報の適切な利用
入札情報は一般に公開されている情報ですが、その使用方法によっては倫理的な問題や法的リスクが生じる可能性があります。情報を悪用せず、正当なビジネス目的のためにのみ使用することが求められます。
公共データの使用に関するガイドライン
公共データを使用する際には、政府や自治体が定めたガイドラインに従うことが求められます。多くの国や地域では、公共データの利用に対するルールや指針が示されています。日本においても、デジタル庁や各省庁がオープンデータに関するガイドラインを定めています。これらに従い、適切な形でデータを収集・活用することが重要です。
1. オープンデータの活用
政府や自治体は、多くの公共データを「オープンデータ」として公開しており、これらは誰でも自由に利用できます。オープンデータポータルサイトからアクセスできるデータは、入札情報を含むさまざまな情報が提供されており、ビジネスの参考にすることができます。オープンデータを活用する際には、ライセンス条件(CC BYなど)を確認し、その条件に従って利用しましょう。
2. 個人情報の保護
入札情報の中には、個人情報が含まれている場合があります。個人情報保護法に基づき、個人が特定される情報の扱いには細心の注意が必要です。特に、第三者にデータを提供する場合や、データを公開する場合には、個人情報の取り扱いに関する法的な規制を遵守することが不可欠です。
3. 倫理的なデータ利用
データの利用は、法的な側面だけでなく倫理的な側面も重要です。入札情報を集める際には、データの使用が社会に与える影響や、発注者・入札者に対する配慮が求められます。データを適切かつ透明性のある方法で利用し、関係者に不利益を与えないようにすることが重要です。
まとめ
入札情報を効果的に収集することは、ビジネスの成功に直結します。従来の手動による収集方法には人的コストや見落としなどの課題がありましたが、最新のテクノロジーを活用することで、これらの問題を解決できます。特に、RSSフィードやAPI、ウェブスクレイピングツールの活用による自動化は、リアルタイムで効率的に情報を収集するための強力な手段です。
さらに、Octoparseのようなツールを使えば、ノーコードで簡単に自動収集システムを構築し、入札情報を定期的に監視・更新することが可能です。しかし、データ収集には法的な側面もあり、著作権法や不正アクセス禁止法、個人情報保護法などの遵守が必要です。法的リスクを回避しながら、効率的かつ合法的に入札情報を収集・活用することが重要です。
このように、自動化ツールを効果的に活用し、法的なガイドラインを守ることで、ビジネスの成長に貢献する入札情報の収集が可能になります。