地球温暖化対策として、電気自動車の普及は世界中で大きなテーマです。将来的に、電気自動車の普及が進めば、ガソリン車の需要は減少し、温室効果ガスの抑制も期待されます。
しかしながら、現状ではガソリン車が大半を占めているため、本当に電気自動車が一般的に普及する未来のイメージが湧かないという方も多いはずでしょう。そこで本記事では、電気自動車の普及状況や、国内自動車メーカーの取り組みを紹介します。
さらに、Webスクレイピングツールを使った、国内に設置されている充電スタンド情報の取得方法も解説します。
日本における電気自動車の普及状況
日本の電気自動車の普及は、ここ数年で急速に進んでいます。2022年の新車販売台数のうち、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の合計販売比率は2.8%となっています。なかでも、EVは前年比で2.7倍に増えるなど、着実に販売台数が伸びていることがわかります。
しかしながら、世界全体で見渡すと日本の電気自動車(EV)の普及率は、決して高いとは言えません。アメリカではEV普及率6%、中国は11%、ヨーロッパ主要国に関しては20%を超えています。
日本でEVの普及が遅れている要因としては、車輌価格が高い、充電インフラが整っていないなどが挙げられますが、世界全体の普及状況から見て国内のEV普及は大きく遅れています。
政府や自治体の支援
政府や自治体では、EV車の補助金や税制優遇を行っており、徐々にではあるものの充電インフラの整備も進んでいます。また、各自動車メーカーが軽EVの販売を開始したことで、電気自動車の価格が下がり始めています。これらはEV普及の追い風ともいえるでしょう。
日本政府は2035年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現することを目指しています。それに伴い、各自動車メーカーも電気自動車の開発や生産に積極的に取り組んでおり、今後も多くの新車が発売される予定です。
こうした政府の政策や自動車メーカーの取り組みなどにより、電気自動車の普及はさらに加速していくと予想されています。
自動車メーカーの技術革新
電気自動車の普及において、自動車メーカー各社は、バッテリー技術、充電インフラ、自動運転技術などの分野で競っています。
バッテリー技術
バッテリー技術の向上は、電気自動車の普及において最も重要な要素です。電気自動車の航続距離を長くするために、自動車メーカー各社は、高性能なバッテリーの開発に取り組んでいます。
充電インフラ
充電インフラの整備も、電気自動車の普及には欠かせません。自動車メーカー各社は、充電スポットの設置や充電速度の向上に取り組んでいます。
自動運転技術
自動運転技術は、電気自動車の普及を加速させるための重要な要素です。自動車メーカー各社は、自動運転技術の開発に取り組んでおり、今後は、自動運転機能を搭載した電気自動車が発売される予定です。
国内自動車メーカーのサステナビリティ戦略
国内自動車メーカー各社は、電気自動車の普及に向けて、技術開発やインフラ整備に取り組んでいます。ここでは各社の具体的な取り組みを紹介します。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、2050年までにライフスタイル全体でCO2排出ゼロを達成することを目標としています。
トヨタ自動車は、この目標達成に向けて、電気自動車や燃料電池車などの電動車両の開発・販売を加速させているほか、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上にも取り組んでいます。
日産自動車
日産自動車は、2018年にサステナビリティ戦略「Nissan Sustainability 2022」を発表し、2050年までに車のライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現する「ゼロ・エミッション」の実現を目指しています。
日産自動車は、この目標達成に向けて、電気自動車や燃料電池車などの電動車両の開発・販売を加速させているほか、自動運転技術の開発にも取り組んでいます。
参考:日産サステナビリティ戦略
ホンダ
ホンダ自動車は、2022年に電動化計画を発表し、2030年までにグローバルで30車種の電気自動車(EV)を展開して年間生産200万台を目指すことを掲げています。
同社ではこの目標達成に向けて、10年間で電動化とそれに関連するソフトウエアに対する研究開発費を約3.5兆円、新たな生産ラインの設置など設備投資に約1.5兆円を投入すると発表しました。
マツダ
マツダは、2021年「サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言2030」を発表し、2030年に向けた新たな技術・商品の開発方針を掲げました。
この商品計画に基づき、2030年時点での生産における電動化比率は100%、EV比率は25%の達成を予定しています。
参考:マツダ、「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づき、2030年に向けた新たな技術・商品方針を発表
スバル
スバルは、2020年に「SUBARU 技術ミーティング」を開催し、2050年までにCO2排出量を2010年比で90%削減することを発表しました。さらにマイルストーンとして、2030年までに全世界販売台数の40%以上を電気自動車(EV)+ハイブリッド車にすること、2030年代前半には、生産・販売する全てのSUBARU車に電動技術を搭載すると公表しています。
EV市場の将来予測とトレンド
電気自動車(EV)の市場は、今後も大きく成長していくと予想されています。その理由は、以下の通りです。
- 環境規制の強化
- バッテリーの価格低下
- 充電インフラの整備
- 電気自動車の性能向上
環境規制の強化により、ガソリン車の販売が制限される国が増えています。そのため、電気自動車への需要が高まっています。また、バッテリーの価格が低下したことで、電気自動車の価格もガソリン車に近づいてきました。さらに、充電インフラも整備が進んでおり、電気自動車の利便性が向上しています。
国際エネルギー機関(IEA)が発表した「世界EV見通し2023」によると、世界の電気自動車(EV)の新車(乗用車)販売台数は、2022年に世界で年間1,020万台を記録し、前年比55%増となりました。今後も電気自動車の需要は拡大し、2025年には世界で2,050万台、2030年には3,690万台の販売が見込まれています。
日本国内の電気自動車の登録台数は、2021年に約127万台を記録し、前年比41%増となりました。今後も電気自動車の普及は進み、2025年には約250万台、2030年には約400万台の登録が見込まれています。
国内のEV充電スタンド普及状況
EV充電スタンドの設置状況と今後の目標
電気自動車(EV)充電スタンド情報サイト「GoGoEV」によると、2023年6月現在、日本全国で約1万800基の電気自動車の充電スタンドが設置されています。そのうち、約1万基が急速充電器(CHAdeMO)です。
急速充電器は、普通充電器よりも充電時間が短く、1時間程度で充電することができます。充電スタンドの設置場所は、高速道路のSA・PAや、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、駐車場などです。また、自治体や企業が設置している充電スタンドもあります。
電気自動車の普及に伴い、充電スタンドの設置も増加しています。しかし、まだ充電スタンドが少ない地域も多く、充電インフラの整備が課題となっています。
国は、2030年までに全国に約15万基の充電スタンドを設置する計画を立てており、補助金も出しています。充電インフラの整備が進むことで、電気自動車の普及がさらに加速されることが期待されています。
充電スタンドデータ収集の重要性
電気自動車の充電スタンド(充電インフラ)のデータ収集は、充電インフラの整備や電気自動車の普及に役立ちます。
例えば、充電スタンドの設置台数や設置場所、充電時間、充電料金などの情報を得られます。これらのデータを収集・分析することで、電気自動車のユーザーの充電習慣や充電ニーズを把握できるようになるでしょう。その結果、電気自動車の普及を促進するための施策を講じることが可能になり、利便性向上が期待できます。
データ収集により、充電インフラの整備や電気自動車の普及を促進し、脱炭素社会の実現に貢献することができます。
以下は、データ収集の具体的な例です。
- 充電スタンドの設置台数や設置場所を把握する。
- 充電時間や充電料金を分析する。
- 電気自動車のユーザーの充電習慣や充電ニーズを把握する。
- 充電インフラの整備計画を立てる。
- 電気自動車の普及促進策を講じる。
Octoparseの活用
Octoparseの利点と機能
電気自動車の充電スタンド(充電インフラ)のデータ収集をしたい場合に役立つのが「Webスクレイピング」です。Webスクレイピングとは、インターネット上のWebページから、特定の情報を自動で収集するコンピューター技術です。
<Webスクレイピングの特徴>
- 手動で収集するよりも効率的かつ正確にデータ収集可能
- 大量のデータを一度に収集可能
- 特定の条件に一致するデータのみを収集可能
- 収集したデータを自動的にデータベースに保存可能
これまで、Webスクレイピングを扱うには高度なプログラミングスキルが求められ、一部の専門家(プログラマー、データサイエンティストなど)が扱うものに留まっていました。しかしながら、近年ではWebスクレイピングを非エンジニアでも扱えるサービスとして、「Webスクレイピングツール」が登場しています。
数あるWebスクレイピングツールの中でも、ユーザー数を誇るのが「Octoparse(オクトパス)」です。Octoparseを使えば、電気自動車の充電スタンドのデータ収集も容易に行うことが可能です。続いては、Octoparseを使ったデータ収集方法を解説します。Octoparseは無料で利用できるので、まずは以下よりダウンロードしてください。
充電スタンドデータの収集手順と方法
ここからは、普通・急速充電器検索サイト「EVsmart」を利用して、充電スタンド情報を取得する方法を解説します。
まずは、「EVsmart」にアクセスしましょう。今回は、例として東京都の充電スタンド情報を収集します。
対象ページのURLをコピーします。
次にOctoparseを立ち上げます。メニューの中から、新規作成 > カスタマイズタスク を選択します。
先程、コピーしたURLを貼り付けます。貼り付けが完了したら、「保存」をクリックしましょう。
操作提案の「ウェブページのデータを自動検出」を押します。自動検出が開始されるので、完了まで数秒待ちましょう。
自動検出が完了したら、再び操作提案から「ワークフローを生成」を押します。
すると画面右側にスクレイピングプロセスを示したワークフローが表示されます。
このワークフローでスクレイピングを実行させても、データ収集は可能ですが、これだけだと検索結果の1ページ分しかデータ収集がされません。東京都内のすべてのデータを収集するためには、「ページネーション(ページ送り)」を設定する必要があります。
ページネーションを設定すると、自動的に次のページに進んでくれたり、他の市区町村のページを開いてくれるようになります。最終的なワークフローの形としては次のようになります。
ページネーションの設定とループアイテムの設定については、以下を参照してください。
複数のページからデータを抽出する
ページネーションの処理(「次へ」ボタンがある場合)
ワークフローが完成したら、スクレイピングを実行させます。画面右上にある「実行」を押しましょう。次にローカル抽出または、クラウド抽出を選択します。(無料版はローカル抽出のみ利用可)
すると、スクレイピングが開始します。完了まで数分待ちましょう。
このように、東京都内の充電スタンドデータ962件分が、わずか数分で抽出されました。抽出データは、Excelやスプレッドシートなどにエクスポートできますので、自由にカスタマイズが可能です。
まとめ
電気自動車の普及は、自動車産業やエネルギー産業に大きな影響を与える可能性があります。現在、国内の自動車メーカー各社は、電気自動車の普及に向けて、技術開発やインフラ整備に取り組んでいます。
しかしながら、現時点での電気自動車の普及率はさほど高くなく、充電インフラの整備も発展途上です。そのため、もし電気自動車に乗って外出する際は、急な充電切れで困らないように、あらかじめ充電スタンドの場所を把握しておくと良いでしょう。
Octoparseを使えば、充電スタンドの情報をすぐに収集できる上、収集したデータをExcelはスプレッドシートにエクスポートすることで、かんたんに充電スタンドリストを作成できます。
Octoparseは無料で使えますので、ぜひ試してみてください。