世界最大級のECサイトであるAmazonには、膨大な商品情報が掲載されています。そうした中で、Amazonの情報を効率的に収集するために、「スクレイピングを活用したい」と考える方も多いでしょう。
しかしながら、Webサイトの中にはスクレイピングを禁止している場合も多いため、Amazonをスクレイピングして問題がないか不安になりますよね。
結論としては、Amazonのスクレイピング自体は違法ではありませんが、場合によっては違法とみなされる可能性もあるため注意が必要です。本記事では、Amazonの利用規約をもとにスクレイピングを行う際の注意点や適切な方法まで詳しく解説します。
スクレイピングとは?
そもそも「スクレイピング」とは、インターネット上のウェブサイトから情報を自動的に収集する技術のことです。例えば、オンラインショップの商品価格や、ニュースサイトの記事、SNSの投稿など、様々なデータを効率的に集めることができます。
人間が手作業でコピー&ペーストせずとも、ロボットが特定のウェブページにアクセスし、必要な情報の抽出、整理・保存まで自動的に行うため、大量のデータを短時間で収集することが可能です。収集したデータは市場調査や競合分析などに活かせるため、スクレイピングはビジネスシーンにおいて非常に有用な手段となっています。
ただし、このロボットが集める情報はインターネット上に公開されているものに限られ、私的な利用の範囲内で行う必要があります。また、ウェブサイトによってはスクレイピングを禁止している場合もあるため、情報を収集する前にはそのサイトの利用規約を確認することが重要です。
スクレイピング自体に違法性はない
ウェブページから情報を自動的に収集するというと、「スクレイピングは違法ではないのか?」という疑問を抱く方も少なくありません。
しかし、スクレイピング自体は違法ではありません。ウェブサイトの情報は一般公開されているものであり、人間が検索してウェブページから情報収集をする行為とスクレイピングは同等とみなされるためです。
例えば、総務省では消費者物価指数(CPI)の調査にウェブスクレイピングを活用しています。政府の調査でもスクレイピングが活用されていますし、その他にも公共の利益に資する研究目的であれば、スクレイピングは有益なツールとして認識されているのです。
したがって、スクレイピングは法律に触れるような怪しい技術ではないということを理解しましょう。
スクレイピングする際の注意点
スクレイピング自体に違法性はありませんが、何でもかんでもスクレイピングを活用して良いわけではありません。使い方によっては違法と見なされる可能性があるため注意が必要です。具体的な注意点は次の3つです。
- 著作権で保護されたコンテンツを無断で収集し、再配布した場合
- 個人情報を含むデータを無断で収集し、プライバシーの侵害につながる場合
- ウェブサイトの利用規約でスクレイピングを禁止しているデータを収集する場合
特に注意が必要なのは3つ目です。多くのウェブサイトでは利用規約内にスクレイピングやデータ取得に関する条項を定めています。したがって、スクレイピングを行う前に、対象となるウェブサイトの利用規約を確認し、必要な場合は許可を得ることが大切です。
また、収集したデータの使用目的が合法的であること、そして収集方法がウェブサイトのサーバーに過度の負荷をかけないようにすることも、法的な問題を避けるために留意しなければなりません。
Amazonはスクレイピング禁止なのか?
Amazonの商品情報や価格データを収集したい方にとって、「Amazonの規約上、スクレイピングは問題ないのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。ここでは、Amazonの利用規約をもとに、スクレイピングが可能なのか考察していきます。
Amazonの利用規約とは
Amazonは、その利用規約の中で、自動化された手段を用いてウェブサイトから情報を収集する行為に対して一定の制限を設けています。
利用許可およびサイトへのアクセス
本規約およびサービス規約の遵守を条件とし、アマゾンまたはコンテンツ提供者は、アマゾンサービスを限定的、非独占的、非商業的および個人的に利用する権利をお客様に許諾します(譲渡およびサブライセンス不可)。この利用許可には、アマゾンサービスまたはそのコンテンツの転売および商業目的での利用、製品リスト、解説、価格などの収集と利用、アマゾンサービスまたはそのコンテンツの二次的利用、第三者のために行うアカウント情報のダウンロードとコピーやその他の利用、データマイニング、ロボットなどのデータ収集・抽出ツールの使用は、一切含まれません。本規約またはその他の規約にて明示的に許諾されていない権利は全てアマゾンまたはそのライセンサー、供給者、出版者、権利保持者またはその他のコンテンツ権利者が留保します。アマゾンサービスまたはそのいかなる部分も、アマゾンからの書面による明示的な承諾を得ていない限り、商業目的のために、複製、複写、コピー、販売、再販、アクセス、その他の利用はできません。商標、ロゴ、およびアマゾンが有するその他の財産権的価値のある情報(画像、文字、ページレイアウト、フォームを含む)は、書面による明示的な承諾を得ていない限り、フレームにしたり、またはフレーム技術を使って取り込んだりすることはできません。また、アマゾンの明示的な書面による許諾なく、アマゾンの名称や商標をメタタグなど隠れたテキストとして使用することはできません。アマゾンサービスを不正に利用することは禁止されており、適用される法律に従ってのみ利用できます。本規約およびその他の利用規約に反する使用をした場合、アマゾンが使用許諾した権利は終了します。
このように、Amazonの利用規約では、ロボットなどの自動化ツールを使用してサイトのコンテンツを抽出することを禁じています。このような利用規約は、特に商品情報や価格データなど、Amazonが商業的価値を持つと考える情報の無許可収集を防ぐ目的で設けられています。
Amazonの利用規約が適用される条件とは
利用規約を確認し、「Amazonでスクレイピングすることは違法である」と感じる方も多いでしょう。しかし、全てのスクレイピング行為が規約違反に該当するわけではありません。
総務省では、「制限のかかっていないコンテンツは、その利用について規約などの合意ができているとは言い難い」といった見解を示しています。「制限のかかっていないコンテンツ」が何を示すかというと、未ログインでも閲覧可能な情報を指します。これを踏まえると、Amazonはログイン無しでも商品情報を閲覧できるため、制限のかかっていないコンテンツに該当すると判断できます。したがって、Amazonに未ログイン状態でスクレイピングする分であれば、制裁を受けることはまずないと言えます。ただし、Amazonにログインをすると、その時点で利用規約に合意したとみなされるため注意しましょう。
Amazonをスクレイピングする際の注意点
Amazonをスクレイピングする際には、いくつかの注意点があります。これらの点を理解することで、法的なリスクを避けながら、安全にデータ収集を行うことが可能です。
アクセス頻度や速度に注意する
Amazonをスクレイピングする際は、Amazonのサーバーに過度な負荷をかけないよう、スクレイピングの頻度や速度には注意を払う必要があります。ウェブサイトに対して過度にアクセスし、サーバーに負荷をかけてしまうと、ウェブサイトの正常な運営を妨害する行為とみなされ、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。
どの程度の影響を与えると偽計業務妨害罪として扱われるかは明確な基準が存在しませんが、高頻度でのアクセスはサービスへの攻撃と見なされることは念頭に置きましょう。これを避けるためには、リクエスト間に適切な時間を空けることが大切です。
データの取得の目的・用途に注意する
Amazonでは、収集したデータの商用利用を禁止しています。したがって、スクレイピングを行う際は、あくまで個人的な使用や分析目的に限定し、Amazonの利用規約や著作権法を遵守する形で利用する必要があります。
収集したデータを販売するなど、ビジネス目的で利用する場合は利用規約違反と見なされるため注意しましょう。
スクレイピングができない場合の代替案
Amazonのデータを収集する方法としてスクレイピングが適切でない、または禁止されている場合でも、他にもデータを得るための代替手段は存在します。以下に、スクレイピング以外でAmazonのデータを収集するためのいくつかの代替案を紹介します。
AmazonのAPIを利用する
Amazonは、開発者や企業が合法的にデータを収集できるように、「Amazon Product Advertising API」と呼ばれる公式のAPIを提供しています。このAPIは、Amazonの利用規約の範囲内でデータを収集するための公式の手段です。APIを利用することで、商品情報、価格、レビューなどのデータにアクセスできます。
アフィリエイトプログラムに参加する
Amazon アソシエイト・プログラムに参加することも、商品データを合法的に収集する方法の一つです。このプログラムは、Amazon独自のアフィリエイトのことで、商品リンクを通じてAmazonの商品を宣伝し、購入があった場合に報酬を得ることができます。
参加メンバーは、このプログラムを利用することによって、商品情報や価格データにアクセスし、自身のウェブサイトやアプリケーションで利用することが可能です。
データプロバイダーから購入する
市場調査会社やデータプロバイダーから、Amazonに関するデータセットを購入することも一つの選択肢です。これらの企業は、合法的な手段で収集したデータを提供しており、競合分析や市場調査に役立つ情報を得ることができます。データの質や範囲はプロバイダーによって異なるため、ニーズに合ったサービスを選ぶことが重要です。
手動でのデータ収集
スクレイピングが適用できない場合や、小規模なデータ収集が必要な場合は、手動でのデータ収集が可能です。特定の商品やカテゴリに関する情報を直接Amazonのウェブサイトから収集し、自身の研究や分析に利用する方法です。時間がかかる作業ではありますが、特定の目的に対して必要なデータのみを選択的に収集できる利点があります。
スクレイピングを適法・適切に行う方法
スクレイピングは、ウェブページ上のデータを効率的に収集する有効な手段です。一方、Amazonに限らず、多くのウェブサイトではスクレイピングに関する制限を設けています。ここでは、スクレイピングを適法かつ適切に行うための方法をいくつかご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ウェブサイトの利用規約を確認する
スクレイピングを開始する前に、対象となるウェブサイトの利用規約を慎重に読み、スクレイピングに関する規定がないか確認することが重要です。多くのウェブサイトは、自動化されたデータ収集ツールの使用を制限しています。これらの規約を理解し遵守することは、合法的にスクレイピングを行う上での第一歩です。
アクセス頻度を制限する
ウェブサイトに対するリクエストの頻度を適切に管理し、サーバーに過度な負荷をかけないようにすることが重要です。過度なアクセスは、サービスの品質に影響を与えるだけでなく、偽計業務妨害罪などの法的問題を引き起こす可能性があります。リクエストの際は適切な間隔を設けることで、このリスクを軽減できます。
データの使用目的を明確にする
収集したデータは、合法的な目的でのみ使用することが必要です。特に、個人情報を含むデータを扱う場合は、プライバシー保護の観点から、最大限の注意が必要です。また、著作権に関する法律を遵守し、無断でのデータの再配布や商業利用を避けることが重要です。
技術的な対策への対応
多くのウェブサイトは、スクレイピングを防ぐためにCAPTCHAやIPアドレスのブロックなどの技術的な対策を講じています。これらの対策に遭遇した場合、強引に回避しようとすることは、利用規約違反や法的な問題を引き起こす可能性があります。対象サイトの技術的な対策を尊重し、必要に応じて許可を得るなど、適切な対応を取ることが求められます。
法的アドバイスを求める
スクレイピングに関して不確実な場合や、大規模なスクレイピングプロジェクトを計画している場合は、法的なアドバイスを求めることが賢明です。専門家に相談することで、スクレイピング活動が現地の法律や国際法に適合していることを確認できます。
まとめ
本記事では、Amazonでのスクレイピングの違法性や注意点、そしてスクレイピングを適切に行う方法まで詳しく解説しました。結論としては、Amazonは利用規約上でスクレイピングの利用を禁止しています。しかし、総務省の見解によれば、利用規約はログインを行った場合に適用されるものです。したがって、未ログインの状態であれば、基本的にスクレイピングは問題ないと考えられるでしょう。
ただし、サーバーに負担を掛けるほどの大規模なスクレイピングを行った場合は、偽計業務妨害罪などに問われる可能性があるため注意してください。また、Amazonに限らずスクレイピングを行う際は、対象ウェブサイトの利用規約に違反していないこと、そして収集したデータを合法的な目的でのみ使用することを遵守しましょう。