ビッグデータの活用が重要性を増す中、データ分析を行う代表的な職種である「データアナリスト」と「データサイエンティスト」に注目が集まっています。どちらも高度なデータ分析スキルと分析結果に基づいた課題解決策の立案が求められる、いわばデータ分析のスペシャリストです。
しかし、具体的な仕事内容や役割は本来異なるため、それぞれ正しく理解した上で、自分に合った職種を選ぶことが大切です。
本記事では、データアナリストとデータサイエンティストの違いについて、仕事内容、必要スキル、求められる役割を解説します。データアナリストやデータサイエンティストの転職を視野に入れている方はぜひ参考にしてください。
データサイエンティストとデータアナリストの定義とは
データサイエンティストとデータアナリストは具体的にどんな職業を指すのでしょうか。どちらの職種も共通しているのは、「データ分析の専門職」である点です。ビッグデータを活用して企業内のあらゆる課題解決や意思決定に貢献するという面では同じ目的を持ちます。
そもそも「アナリスト(Analyst)」とは、分析家、評論家を指します。つまりデータアナリストとは、データや情報に基づき物事や事象に関して調査・分析を行い、ビジネスの将来予測を行う専門家といえるでしょう。
一方、「サイエンティスト(Scientist)」とは、科学者のことを指します。そのためデータサイエンティストとは、ビジネス上のあらゆる意思決定の場面において、意思決定者が合理的な判断を行えるように、科学的根拠に基づいたサポートをする専門家といえます。
ただし、実際のところ明確な定義は存在しておらず、企業によっては混同しているケースや、役割の線引が曖昧になっているケースが少なくありません。一般的にデータサイエンティストはデータアナリストの上級職と捉えられることが多く見られます。
続いて、データサイエンティストとデータアナリストの違いを更に詳しく解説していきます。
データサイエンティストとデータアナリストの仕事内容の違い
データサイエンティストとデータアナリストの仕事内容の違いを解説します。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事内容は会社によって異なるため、明確に決まっているわけではありません。一般的には以下のような職務を担うことが多くなっています。
- 大量のデータ収集と、より利用しやすいフォーマットへの変換
- データ分析手法の最新動向の把握(機械学習、ディープラーニングなど)
- システム開発部門や情報システム部門とのコミュニケーション
- SAS、R、Pythonなどのプログラミング言語を用いたコーディング
- データに潜むパターンの発見などビジネスの課題解決につながる深い洞察
データアナリストの仕事内容
データアナリストは、データサイエンティストに比べてビジネス寄りの職種といわれます。そのため、データや情報に基づいた検証・分析だけではなく、事業課題の整理やデータ分析を通じて、今後どのように事業を展開すべきかなど戦略立案を行います。
- 経営企画やマーケティング部門とのコミュニケーション
- 分析プロジェクトのマネジメント
- データベースからのデータ抽出、集計・可視化
- データ分析から導き出した仮説に基づいたテストの実施と検証
- 分析結果をもとにレポートの作成および改善施策の立案
データサイエンティストとデータアナリストの必要スキルの違い
続いて、データサイエンティストとデータアナリストに必要なスキルをそれぞれ解説します。
データサイエンティストの必要スキル
データサイエンティストは、プログラミング言語によるアルゴリズム実装やデータクレンジング、分析モデルの構築といった高い専門性が求められます。さらに、統計学や機械学習の理論に基づいた仮説・検証のスキルが必要です。
とりわけ統計学や情報工学は進歩が著しい分野でもあるため、最新技術や学術文献のキャッチアップも欠かせません。扱うデータに関して、探究心を持って分析に取り組む姿勢が求められます。
<データサイエンティストに必要なスキルの例>
- 数学やデータ分析手法などの統計学の知識
- データ処理やデータベース構築など情報工学の知識
- ビッグデータにまつわる最新技術などの知識
- Webスクレイピングツールなど分析ツールを扱うスキル
- PythonやRなどのプログラミングスキル
データアナリストの必要スキル
データアナリストは数学や統計学などの基礎知識や分析ツールを扱うスキルといった、データ分析に直接関連するスキルの習得が必要です。データサイエンティストほどの分析スキルは不要とされることが一般的ですが、基礎的な部分は理解しておくべきでしょう。
ただしデータアナリストは、データを用いた施策立案も行うため、ロジカルシンキングなども重要なスキルです。とりわけ専門性がないビジネスサイドのメンバーや経営層に対して、分析結果をわかりやすく伝える必要があるため、プレゼンテーションスキルなども磨く必要があります。
<データアナリストに必要なスキルの例>
- 数学やデータ分析手法などの統計学の基礎知識
- SQLなどデータベースの知識
- ロジカルシンキング
- Webスクレイピングツールなど分析ツールを扱うスキル
- PythonやRなどのプログラミングスキル
データサイエンティストやデータアナリストに役立つ資格
データサイエンティストやデータアナリストになるための必須資格はありませんが、関連する資格を取得すればデータ分析に関する専門知識やスキルを磨くことができます。転職活動の際も、資格を持っていることで一定の専門性を保有する証明になります。
データサイエンティストやデータアナリストに役立つ資格例をいくつか紹介します。
資格名 | 特徴 |
統計検定 | 統計に関する知識や活用力を評価する試験。4級〜1級まである。 |
情報処理技術者試験 | プログラミングやIT技術のスキルを評価する試験。 |
ORACLE MASTER | Oracle Databaseの管理スキルを証明する資格。データベース系の資格として知名度が高い。 |
データベーススペシャリスト試験 | IPAが主催する情報処理技術者試験の1つ。データベース活用のスキルを証明できる。 |
Python3 エンジニア認定データ分析試験 | Pythonを使った実践的なデータ分析のスキルを証明できる資格。 |
G検定・E資格 | 日本ディープラーニング協会が主催。機械学習やディープラーニングのスキルを証明できる。 |
アクチュアリー資格試験 | 保険業界の高度専門職「アクチュアリー」になるための試験。数学に関連したスキルを証明できる。 |
データサイエンティストとデータアナリストの年収・将来性
データサイエンティストやデータアナリストは経験・スキルが求められる職種です。ただし、データ活用の分野は比較的新しいため、明確に仕事内容や役割が決まっていないことが実情です。勤務先によっては、チームで役割を分担することもあれば、たった一人で関連業務を全てこなさなければならないこともあります。そのため賃金も企業によって大きく差があります。
参考までにIndeedの給与データベースによると、日本におけるデータサイエンティストの平均年収は約520万円、データアナリストの平均年収は約632万円となっています。どちらの職種も年収1,000万円を超える求人があります。
データサイエンティストやデータアナリストとして活躍したい場合は、自身のスキルや能力を加味して、自分のパフォーマンスを最も発揮できる環境を選ぶと良いでしょう。いくら報酬が高くとも、求められるレベルが自分の能力を越えている場合は、働く側と雇う側の双方にとって満足の行く結果が得られない可能性があります。
まとめ
本記事ではデータアナリストとデータサイエンティストの違いについて、仕事内容や役割、必要スキルをもとに解説しました。ビッグデータの活用は今やIT業界のみならず、あらゆる業界で求められています。そのため、データ分析のスペシャリストとしてのスキルがあれば、将来的にも活躍できるでしょう。
とりわけ日本では大学や各教育機関でデータサイエンス教育にも力を入れはじめています。学習範囲が広いため、独学ではなかなかスキルを磨くことが難しいと感じる場合は、学び直しも含めて自身のキャリアを見直してみてはいかがでしょうか。