企業のマーケティング活動やプロモーション活動ではデータの活用が欠かせません。その中で、元データの収集に注目されているのが「Webスクレイピング」です。Webスクレイピングを活用すれば、自動的に大量のデータを集めることが可能です。
しかし、Webスクレイピングとはどのような技術なのか、具体的にどういったシーンで活用できるのかイメージが沸かない方も多いでしょう。
そこで本記事では、Webスクレイピングの基本や仕組み、そして具体的な活用事例まで詳しく解説します。Webスクレイピングの理解を深めたい方はぜひご覧ください。
1. ウェブスクレイピングとは?
Webスクレイピングとは、Webサイトから特定の情報を自動的に抽出するコンピュータソフトウェア技術のことです。Webスクレイピングを使えば、インターネット上に存在するWebサイトやデータベースを探り、大量のデータの中から特定のデータのみを抽出させることができます。
スクレイピング(Scraping)の由来は、「Scrape(こする・かき出す)」から来ています。Webスクレイピングは、Webデータ抽出、スクリーンスクレイピング、Webデータ収集とも呼ばれることもありますが基本的に同義です。
Webサイト上のデータを移す際は、手作業でコピー&ペーストを行う方も多いでしょう。しかし、Webスクレイピングの活用によって、面倒な手作業を自動化できるため、作業時間の短縮や転記ミス防止が可能です。 抽出したデータはExcelやCSVファイルなどにエクスポートできるため、データを活用した分析が行えるようになります。
Webスクレイピングの仕組みは、「Webクローラー」「Webスクレイパー」の2つで構成されています。両者を例えるならば、クローラーは馬、スクレイパーは馬車です。クローラーはスクレイパーをインターネット上に導き、要求されたデータを抽出します。続いて、それぞれの特徴を詳しく解説します。
Webクローラー
Webクローラーとは、インターネット上のWebサイト上を巡回し、テキスト・画像・動画などのデータを自動的に収集・保存するコンピューターボットのことです。
検索エンジンでキーワードを入力した際、キーワードに該当するコンテンツが検索結果として表示されます。その仕組みをわかりやすくいえば、Webクローラーがインターネット上を巡回し、該当するコンテンツを探しているということです。
このようにWebクローラーがWebサイト上を巡回することを「クローリング」と呼びます。ちなみにWebクローラーは、GoogleやIndeed、Bingなど検索エンジンごとに種類が異なります。Webクローラーの仕組みをさらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
Webスクレイパー
Webスクレイパーとは、Webページからデータを抽出するために構築されたプログラムのことです。WebスクレイパーはWebサイトのHTML内から不要な情報を削り、必要な情報だけを自動で抽出します。
情報を収集するまではクローリングと同じですが、Webスクレイパーは取得した情報を加工し新たな情報として生成するまでの工程を含みます。
スクレイピングとクローリングの違い
ウェブクローリングは、広範な範囲のWebサイトを巡回し、可能な限り多くの情報を取得することが主な目的です。この技術は、主に検索エンジンがWeb全体を効果的に検索できるようにし、ユーザーに最適な検索結果を提供するために利用されます。クローラーはWebサイトを巡回し、その中のリンクをたどることで、大量のデータを収集します。
一方で、ウェブスクレイピングは特定のデータポイントを対象にし、HTMLや他のウェブページの構造から必要な情報を抽出することを目的としています。具体的な要素やテキスト、画像など、特定のコンテンツを取り出すことがウェブスクレイピングの主な活動です。この手法は、特定のウェブサイトから必要な情報を抽出する際によく使用されます。
総じて、ウェブクローリングはWeb全体を巡回して情報を広範に収集することを目的とし、ウェブスクレイピングは特定のデータを対象にして必要な情報を取り出す技術です。どちらも情報収集の手段ではありますが、そのアプローチと目的の面で異なる特徴を持っています。
2.ウェブスクレイピングのメリット
Webスクレイピングは、ウェブサイトから情報を自動的に取得する技術として、多くのビジネスや研究分野で利用されています。ここでは、Webスクレイピングの主なメリットを解説します。
データ収集の効率化
Webスクレイピングを利用することで、手動でのデータ収集作業を自動化し、大量の情報を短時間で取得することが可能です。これにより、時間と労力を大幅に節約することができます。
最新の情報をリアルタイムに取得
定期的にスクレイピングを行うことで、常に最新の情報を取得することができます。市場の動向や競合他社の動きなど、変動する情報をリアルタイムにキャッチすることが可能です。
カスタマイズされたデータの取得
特定の条件やキーワードに基づいてデータを収集することができるため、必要な情報だけを効率的に取得することができます。これにより、収集するデータ品質を向上させることが可能です。
3.ウェブスクレイピングの活用事例
Webスクレイピングは、ニュースサイト、ブログ、ECサイト、SNS、不動産ポータルなど、さまざまなサイトを対象に使われています。
それらのサイトからデータを抽出することで、商品価格の比較、株価の監視、口コミの分析といったような用途で活用でき、マーケティング活動や戦略立案に役立ちます。ここでは具体的なWebスクレイピングの活用事例をいくつか紹介します。
製品価格調査
製品価格の調査はWebスクレイピングが得意とする活用方法です。ECサイト(Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど)から商品や価格情報を抽出し、それらの見える化によって、データに基づいた価格設定や商品選定に役立ちます。ネットショップ運営者にとって欠かせない役割を果たします。
- 価格監視
- 価格調査
- 競合他社の調査
- 製品トレンドの調査
市場調査
競合他社の動きや最新トレンドをリアルタイムで把握することは、ビジネスにおいて非常に重要です。Webスクレイピングを活用すれば、市場調査に必要なデータを正確かつ、大量に収集できます。これにより、過去の経験則や勘に頼るのではなく、事実に基づいたデータドリブンなマーケティング活動や販売戦略の構築を促進します。
金融機関向けオルタナティブデータ
オルタナティブデータとは、金融機関や投資家が資産運用の際に参考にしていたデータの中で、一般的に公開された情報以外のデータのことです。Webスクレイピングを活用することで、それらの情報の価値を飛躍的に高めます。
投資家やヘッジファンドマネージャーの投資判断において、情報やデータの洞察力はかつてないほど高まっています。すでに世界のトップ企業は、Webスクレイピングによって抽出されたデータの価値を高く評価しており、利用頻度・活用範囲を増やしています。
不動産調査
日常業務にWebスクレイピングによるデータ分析を取り入れることで、売買エージェントや仲介業者は不動産を購入したいユーザーや、不動産投資を始めたいユーザーに対して、要望にあった最適な物件を提案することが可能です。
例えば、従来の不動産ポータルサイトでは、膨大な数の物件情報から希望にあった物件を探すのが困難でした。そこでWebスクレイピングを活用することで、新着物件や価格改定があった物件情報をリアルタイムでユーザーに届けることが可能です。
ニュース&コンテンツ監視
インターネット上には新しい情報が日々膨大に生まれています。そうした中で、自社のビジネスに関連する情報を拾い集めるのは容易ではありません。そこでWebスクレイピングを活用すれば、あらかじめ設定した条件に関連する情報だけを収集できます。
例えば、競合サイトの更新情報の監視、自社が言及されたニュース記事の集約などに利用できます。
リードジェネレーション
Webスクレイピングはリードの生成にも有効です。スクレイピングは、様々なWebサイトから大量のデータを抽出できますし、特定のキーワードや属性をターゲットにすることで、自社のビジネスに関連性の高いユーザーのリードを生成できます。
さらに、年齢・場所・興味関心といったデータも取得できるため、他の手段では入手が難しい潜在顧客の連絡先を見つけることも可能です。
ブランドモニタリング
競争の激しい今日の市場では、オンラインでの評判を守ることが最重要の課題です。オンラインで製品を販売していて、厳格な価格ポリシーを実施する必要がある場合や、オンラインで人々が製品をどのように認識しているかを知りたい場合など、Webスクレイピングによるブランド監視は、このような情報を提供します。
ビジネスの自動化
Webスクレイピングはビジネスプロセスの自動化に役立ちます。定期的なレポート作成で、毎回Webサイトにアクセスしてデータを抽出するのは面倒です。
Webスクレイパーを作成して、定期実行を設定すれば、後は設定されたタイミングで自動的にデータが抽出されます。抽出されたデータをスプレッドシートなどにエクスポートするところまで、自動化すれば、レポート作成に掛ける時間は大幅に短縮されます。その分、分析や洞察に注力した方が有意義でしょう。
広告価格のチェック
Webスクレイピングを使えば、Googleショッピング広告などの商品価格をリアルタイムで確認できます。出品者として商品広告を出稿する際、適切な価格設定は広告のクリック率やコンバージョン率を左右します。
とりわけ、ECサイトには数多くの出品者が存在する中で、手動で価格を監視することは不可能ですし、ましてや経験や勘で価格設定を設定するのは非効率です。つまり、ECサイト事業者にとってデータ活用は必要不可欠です。中でも無料〜低額で利用できるWebスクレイピングツールはECサイト運営の初心者にとって最適なツールです。
4.誰でもスクレイピングを行えるウェブスクレイピングツールとは
Webスクレイピングを行うには、PythonやRubyなどのプログラミングによって、Webスクレイパーの作成が必要です。しかし、非エンジニアがプログラミングスキルを習得することは容易ではありません。
そのような際は、「Webスクレイピングツール」が役立ちます。Webスクレイピングツールとは、プログラミングを使わずに、Webスクレイピングタスクの作成から実行まで行えるノーコードツールです。
Webスクレイピングツールを使えば、任意のWebサイトのURLを入力し、その中からどのデータを抽出したいかを指示を与えるだけで、Webスクレイピングが実行されます。
プログラミングは一切不要で、基本的にはマウスのポイント・アンド・クリック操作だけで完結できるのが特徴です。現在では、多くのWebスクレイピングツールが登場しているので、どのようなツールがあるか知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【2024年更新】Webスクレイピングツールにオススメの9選
ウェブスクレイピングツールOctoparseとは
数あるWebスクレイピングツールの中でも、特にユーザー数を獲得しているのがOctoparse(オクトパス)です。クラウド型WebスクレイピングツールのOctoparseは、専用ソフトウェアをダウンロードしてアカウントを作成すれば、誰でもすぐに使い始められます。
Octoparseの主な特徴をいくつか紹介します。また、Octoparseを早速使ってみたい方は、こちらの公式サイトよりダウンロードしてください。
1.コーディング不要のWebスクレイピング
Octoparseは、コーディングの知識がなくてもウェブスクレイピングを行うことができるツールです。ユーザーはワークフローデザイナーを使用して独自のスクレイパーを設計し、ブラウザ内ですべての作業を視覚化することができます。
2.AIを活用したWebスクレイピング
OctoparseにはAI機能が組み込まれており、Auto-detectを使用して迅速にスクレイピングを開始することができます。また、スクレイピングの過程でのヒントも提供されますので、より効率的なWebスクレイピングプロセスを作成できます。
3.充実したWebスクレイピングテンプレート
Octoparseには、最も人気のあるWebサイト用のプリセットテンプレートが数百種類用意されており、設定なしで即座にデータを取得することができます。
例えば、Amazonのテンプレートを使えば、商品レビューデータの収集や、商品の価格調査をわずかな操作だけで実行することが可能です。
Octoparseのテンプレートを早速使ってみたい方は、こちらのサイトよりダウンロードしてください。
5.ウェブスクレイピングの違法性と注意事項について
Webスクレイピングを使ったデータ収集と聞くと、「違法ではないのか」と不安に感じる方も多いでしょう。大前提として、Webスクレイピング自体は違法ではありません。政府でも、統計を取る際にスクレイピングを活用しており、データ活用が求められる現代において、スクレイピングは欠かせないテクノロジー技術です。
消費者物価指数 (CPI) へ の ウェブスクレイピングの活用について(総務省)
しかしながら、スクレイピングの目的や方法によっては法的な問題が生じる可能性があります。例えば、サイトの利用規約を遵守しない場合や、個人情報を不正に取得する場合などは問題となります。
また、頻繁なアクセスによってサイトのサーバーに負荷をかける行為も避けるべきです。重要なのは、スクレイピングを行う際には常に倫理的かつ法的な側面を考慮することです。
スクレイピングの違法性について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
スクレイピングは違法?Webスクレイピングに関する10のよくある誤解!
まとめ
今回は、Webスクレイピングの基本からWebスクレイピングの活用事例まで紹介しました。データ活用の重要性がますます高まる中、Webスクレイピングはビジネスの基本となりつつあります。
Webスクレイピングツールを使えば、プログラミングスキルがない非エンジニアの方でも、かんたんにスクレイピングを実行できますので、まずは触れてみることをおすすめします。特に、Octoparseは無料で利用できる上、テンプレートも豊富なのでスクレイピングを体験してみるのに最適です。
Webスクレイピングがはじめての方なら、その手軽さに感動することでしょう。ぜひWebスクレイピングをマスターして、データドリブンなビジネスライフを送ってください。